欧州では、欧州連合(EU)レベルでの共同体意匠制度がEU規則や EU指令により規定されている。昨今、イノベーションや魅力あるデザインを有する新製品を意匠の観点で保護する重要性が増している中で、利便性がよく、近代的で、効果的かつ一貫性のある法的意匠保護の必要性が高まっている。
欧州委員会は、昨今、EU 共同体意匠制度に係る規則・指令に対する見解を収集し、現状の共同体意匠制度が適切に機能し、ユーザーの目的に沿ったものになっているかどうかを評価している。
現状の意匠保護に関する見解としては、特に、意匠保護の要件の明確性及び堅牢性の欠如、複雑な手続、不適切な料金レベル及び料金体系、手続規則のハーモナイズの欠如、断片化されたスペアパーツの域内市場などの点が改善すべき課題として挙がっている。
本レクチャーでは、フランスの特許事務所「Beau de Loménie事務所」のパートナーであるMs. Aurélia MARIEとMs. Emmanuelle MACHINETをお招きして、EUにおける意匠保護の課題及び、今後の改訂すべき事項について、解説いただきます。欧州における意匠保護の実務にお役立て頂ければ幸甚に存じます。
レクチャー動画(約46分)及び、レクチャー資料については、以下よりご覧頂けます。
はじめに
委員会評価の背景、目的、方法
Ⅰ. 意匠保護の要件:達成すべき改善点
A) 保護要件:「意匠」、「製品」、「視認性」の概念の明確化、
製品固有の保護を行わないことの整合性、UCD開示の地理的位置の明確化
B) 3Dプリント、デジタル環境、グリーン経済に関する具体的な問題点
Ⅱ. 登録手続きと実体審査:更なるハーモナイズの必要性
A) 手続面:より統一されたデジタル表示要件の必要性、より効率的で正当な料金レベルと体系、
その他の手続面のハーモナイズ(公開延期の期間、「分類の単一性」要件の解除...)
B) 実体審査の最低基準のハーモナイズの必要性は,国内レベルでの行政手続の提供によって相殺
Ⅲ. 意匠保護の効率化
A)他の知的財産権(IPR)との相互作用に起因する問題
B) エンフォースメントと輸送中の商品
Ⅳ. 修理用スペアパーツ
A) EU法の経過措置(指令98/71の第14条「凍結プラス条項」と
規則No.6/2002の第110条「修理条項」)では、域内市場の細分化を避けるには不十分
B) 可能なオプション: 指令 No.98/71 に 修理条項を導入
まとめ
検討されている変更点と現在の改革課題を達成するための様々なオプションの概要